EMIとは?EMC・EMSとの違いから電子機器のノイズ対策まで解説

EMIとは?EMC・EMSとの違いから電子機器のノイズ対策まで解説

EMIとは、電子機器が発する電磁ノイズが他の機器の動作に悪影響を及ぼす「電磁妨害」のことです。
この記事では、EMIの基礎知識から、混同されやすいEMSやEMCとの違い、さらには具体的なノイズ対策の方法までを解説します。
電子機器の設計や品質保証において、EMCとは何かを理解し、適切なEMI対策を講じることは製品の信頼性を確保する上で非常に重要です。

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EMIとは?電子機器の動作を妨げる電磁ノイズのこと

EMIは「Electromagnetic Interference」の略語で、日本語では「電磁妨害」や「電磁干渉」と訳されます。
具体的には、ある電子機器が動作する際に意図せず発生させてしまう電磁エネルギー(電磁ノイズ)が、周辺にある他の電子機器の性能を低下させたり、誤作動を引き起こしたりする現象を指します。

この不要な電磁ノイズは、テレビの映像の乱れやラジオの雑音、さらには医療機器や産業用ロボットの重大なトラブルの原因ともなり得ます。

EMI・EMS・EMCのそれぞれの意味と関係性

電子機器の電磁波問題を考える上で、EMI、EMS、EMCという3つの用語が基本となります。
これらは密接に関連しており、それぞれの意味を正確に理解することが、適切な対策を講じる第一歩です。
EMCは、電子機器が電磁的な環境において適切に機能するための能力を示す重要な概念であり、EMIとEMSを知る必要があります。

この3つの関係性を把握することで、ノイズ問題へのアプローチが明確になります。

EMI(電磁妨害):ノイズを放出する現象

EMI(Electromagnetic Interference)は、電子機器が外部に対してどれだけ不要な電磁ノイズを放出するか、という「妨害を与える側」の指標です。
すべての電子機器は、動作中に大小さまざまな電磁波を発生させています。

このうち、本来の機能を果たすために必要ない電磁波成分がノイズとなり、ケーブルや筐体の隙間から外部空間へ放射されたり、電源線を通じて他の機器へ伝わったりすることで、電磁妨害を引き起こします。

EMS(電磁感受性):ノイズの影響を受ける度合い

EMS(Electromagnetic Susceptibility)は、外部からやってくる電磁ノイズに対して、電子機器がどれだけ影響を受けずに正常な動作を維持できるか、という「妨害を受ける側」の耐性を示す指標です。
日本語では「電磁感受性」や「イミュニティ」と呼ばれます。
EMSの性能が高い機器は、周囲に強いノイズ源があっても誤作動しにくく、安定した動作が可能です。

逆にEMSが低いと、わずかなノイズでも影響を受けてしまう可能性があります。

EMC(電磁両立性):ノイズを出さず影響も受けない性能

EMC(Electromagnetic Compatibility)は「電磁両立性」と訳され、電子機器が持つべき総合的な性能を指します。
具体的には、EMI(他の機器を妨害するノイズを放出しない)とEMS(他の機器からのノイズで妨害されない)という2つの要件を同時に満たしている状態のことです。
つまり、EMCとは、ある電子機器がその環境で他の機器と共存し、互いに悪影響を与えることなく機能できる能力を意味します。

EMIが発生する原因と引き起こされる問題

現代の電子機器は、その構造上、EMIを発生させやすい要素を数多く内包しています。
EMIが発生するメカニズムと、それによって引き起こされる具体的な問題を理解することは、効果的な対策を立てる上で欠かせません。
原因を特定し、及ぼす影響を予測することで、設計段階から適切な手を打つことが可能になります。

EMIの主な発生源は?デジタル回路やモーターが原因に

EMIの主な発生源は、電流や電圧が急激に変化する部分です。
代表的なものとして、高速でスイッチング動作を行うデジタル回路のクロック信号や、電源回路(AC-DCコンバータ、DC-DCコンバータ)が挙げられます。
また、ブラシ付きのモーターやリレーといった、機械的な接点が開閉する部品も強力なノイズ源となります。

特に近年の半導体デバイスは、高速化・高集積化が進んでおり、これがより高周波で複雑なEMI問題を生む一因となっています。

EMIが及ぼす影響とは?機器の誤作動や性能低下を招く

EMIが及ぼす影響は多岐にわたります。
身近な例では、ラジオやオーディオ機器に「ザー」という雑音が入ったり、テレビの画面にちらつきが生じたりします。
また、通信機器ではデータ転送速度の低下や通信の途絶、コンピュータではフリーズやデータ化けといった不具合を引き起こします。

さらに、産業用ロボットや医療機器、自動車の電子制御システムなどがEMIの影響を受けると、予期せぬ誤作動を起こし、人命に関わる重大な事故につながる危険性も否定できません。

なぜEMI対策は重要なのか?製品の信頼性を確保するために不可欠

EMI対策は、製品の信頼性と安全性を確保するために極めて重要です。
対策が不十分な製品は、市場において他の電子機器の動作を妨げたり、逆に外部からのノイズで自身の機能が停止したりする可能性があります。
これは製品の不具合やリコールに直結し、企業の信頼を大きく損なう原因となります。

また、世界各国では電子機器が放出する電磁ノイズの許容値を定めた規格(日本ではVCCI、米国ではFCCなど)があり、製品を販売するためにはこれらの規格をクリアしなければなりません。

【実践】EMI対策の基本的な考え方と3つの手法

EMI対策を効果的に進めるためには、基本的な考え方を理解しておくことが重要です。
ノイズ問題は「ノイズ発生源」「ノイズが伝わる経路(伝搬経路)」「ノイズを受ける機器(被害機器)」の3つの要素で構成されます。
このうち、1つでも取り除けば問題は解決します。

この考え方に基づき、具体的な対策手法として「発生源の抑制」「伝搬経路の遮断」「放射の防止」の3つが基本となります。
これらを適切に組み合わせることで、EMC性能の高い製品を実現します。

手法1:ノイズの発生源を抑制する(回路設計)

最も効果的で根本的な対策は、ノイズの発生源そのものを抑制することです。
これは主に回路設計の段階で行われます。
例えば、ノイズを発生しやすい高速な信号線はできるだけ短く配線する、信号の波形が急峻になりすぎないようにする、グラウンド(GND)の面積を広く確保して安定させる、といった基板パターン上の工夫が挙げられます。

また、スイッチング時のリンギングが少ない半導体デバイスを選定するなど、部品選びも重要な対策の一つです。

手法2:ノイズの伝わる経路を遮断する(シールド)

発生してしまったノイズが、他の回路や外部空間へ伝わらないように経路を遮断する手法です。
代表的なのが「シールド」で、ノイズ源となる回路や部品、あるいは機器全体を金属のような導電性の材料で覆う方法がとられます。

これにより、電磁エネルギーはシールド材の内部に封じ込められ、外部への放射が抑えられます。
また、外部からの電磁ノイズが内部回路へ侵入するのを防ぐ効果もあり、EMS対策としても有効な手段です。

手法3:ノイズが空中へ放射されるのを防ぐ(フィルタリング)

電源ケーブルや信号ケーブルは、ノイズが伝わる主要な経路であり、アンテナのように振る舞って電磁波を放射する原因となります。
これを防ぐのが「フィルタリング」です。
具体的には、ケーブルの根本に「EMIフィルタ」と呼ばれる電子部品(コイルやコンデンサを組み合わせたもの)を挿入します。

このフィルタは、製品の動作に必要な信号や電力は通過させ、不要な高周波のノイズ成分だけを減衰させる役割を果たし、ケーブルからのノイズ放射を効果的に抑制します。
ノイズフィルターについては「電源ライン用ノイズフィルターとは」で詳しく紹介しています。

EMIとはに関するよくある質問

ここでは、EMIに関して特に多く寄せられる質問とその回答をまとめました。
EMIとノイズの違い、医療分野との関わり、あるいはEMCとは何かといった基本的な疑問から、他の分野で使われる同名の言葉との違いまで、簡潔に解説します。

Q. EMIと「ノイズ」は同じ意味ですか?

厳密には異なります。
ノイズは不要な電磁エネルギーそのものを指す言葉であるのに対し、EMI(電磁妨害)はそのノイズが電子機器に悪影響を及ぼす「現象」を指します。
ただし、実務の現場では原因となる不要な電磁波を指して「EMIノイズ」と呼ぶなど、ほぼ同じ意味合いで使われることも少なくありません。

Q. 医療機器とEMIにはどのような関係がありますか?

非常に深い関係があります。
生命維持に関わる医療機器が、スマートフォンなどの電磁波によってEMIを受け、誤作動を起こせば重大な事故につながる恐れがあります。
そのため、医療機器には極めて高いレベルのEMI対策が施されており、病院内などでは電子機器の使用が制限されることがあるのです。

Q. 音楽レーベルの「EMI」とは違うものですか?

はい、全くの別物です。
音楽業界で知られるEMIは、かつて存在したイギリスの大手レコード会社の名称(旧EMI Group Limited)です。
一方、この記事で解説しているEMIは、工学分野における「Electromagnetic Interference(電磁妨害)」という現象を指す専門用語の略称です。

まとめ

EMIは、電子機器が放出する不要な電磁ノイズが他の機器に悪影響を及ぼす現象です。
製品の信頼性と安全性を確保するためには、EMI対策が不可欠となります。
対策においては、ノイズを出す側だけでなく、受ける側の耐性も高め、両者を両立させるEMCの考え方が重要です。

具体的な手法には、発生源を抑える回路設計、伝搬経路を遮断するシールド、放射を防ぐフィルタリングなどがあり、これらを設計の初期段階から総合的に検討することが求められます。

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